陣痛を乗り切る「いきみ逃し」のコツとは?
出産の際には、赤ちゃんが出てくるのを補助するために「いきむ」必要があります。しかし、いざ産まれるというタイミングまでは、陣痛を「いきみ逃し」で乗り切らなければなりません。では、いきみ逃しとは具体的にどのようなイメージで行えば良いのでしょうか。今回は、いきみ逃しとはなにか、やり方のポイントについて解説します。
目次
陣痛が起こるまで
陣痛が始まる前には、さまざまな前兆があります。その最たる例が破水です。破水して陣痛が始まり、さらに出産が近づく(=子宮口が開く)につれて陣痛の間隔が短くなります。
通常は陣痛の間隔が10分程度になったら、すぐに病院に連絡を取り、向かいます。陣痛は、破水してから30分、20分、15分とどんどん短くなっていくので、陣痛を計測する専用のアプリなどを使って間隔を測ると良いでしょう。
陣痛の間隔
陣痛が起きて病院に行くと、基本的には陣痛室で過ごすことが多いです。ここでは、陣痛とともに子宮口が10cmぐらいまで開くのを待ちます。
子宮口が0~3cmのときは、1回につき30秒程度の陣痛が10分おきに起きます。3~8cmになると陣痛1回につき1分ほど続き、間隔は5分程度まで短くなります。さらに8~10cm開くと、痛みが1分間続き、間隔も2分ほどに縮まり、いよいよ出産です。子宮口が10cmになったら分娩室へ行って分娩の準備を始めます。
陣痛が続いている間は、まだいきまないようにしましょう。子宮口が全開に近づくと自然と力が入っていきむことになるため、そのときまでは、自然な体勢で過ごすのがおすすめです。陣痛がおさまっている間は、眠れるようなら眠っておきましょう。
いきみ逃しとは
子宮口が全開大になっていないにもかかわらず、いきみたくなってしまうのは、赤ちゃんの頭が徐々に下りてくることが要因だと言われています。
いきみ逃しとは、子宮口が全開大(約10cm)に開くまで、陣痛中にいきまないようにすることを指します。
子宮口が開ききる前にいきんでしまうと、産道が傷つく原因になるなど、スムーズなお産を阻害する原因になりかねません。
いきみ逃しのタイミング
いきみ逃しは、どのようなタイミングで行えば良いのでしょうか。ここからは、いきみ逃しのタイミングとサポートの重要性について紹介します。
いきみ逃しを行うのは「分娩第一期」
分娩が進む過程は、分娩第一期~第四期に分かれています。そのうち、いきみ逃しを行うのは「分娩第一期」です。分娩の第一期は、子宮口が徐々に全開大に広がっていく途中の時期で、子宮口が全開大になっていよいよ赤ちゃんが生まれてくる第二期までの期間にあたります。
子宮口が全開大になるまでいきまないようにするため、いきみを「逃し」ます。子宮口が全開大になって第二期になれば、いきみが許可されることが一般的ですが、お産の経過などによって異なるので医師や助産師の指示に従いましょう。
サポートも重要
いきみが許可されるまでは、強い痛みを感じる陣痛の最中も、いきみたくなってしまうのを受け流して、子宮口が開ききるまで待たなければなりません。そのため、パートナーや立ち会う人のサポートも重要です。赤ちゃんが下りてくることで痛みが生じやすい腰をさすったり、尾てい骨あたりを強く圧迫したりしてもらうと軽減できる場合があります。
また、テニスボールやアクティブチェアなどを利用するのもおすすめです。本人が一番楽だと感じられることを試しながら、分娩までのいきみ逃しをサポートしましょう。
いきみ逃しのポイント
ここからは、いきみ逃しを行う際のポイントやコツについて紹介します。
呼吸法を意識する
いきみ逃しのポイントは呼吸法です。以前までは、いわゆる「ヒッヒッフー」の呼吸を行う「ラマーズ法」が主流でしたが、近年ではあまり用いられなくなり、「ソフロロジー法」と呼ばれる呼吸法が主流となっています。
ソフロロジー法は、強く長く息を吐くことで体をリラックスさせるものです。息を吐ききれば自然に吸い込むため、呼吸を止めることなく体の力を抜いていきみ逃しを行うことができます。いきみ逃しの際には、呼吸を意識して赤ちゃんにしっかりと酸素を送ることが大切です。
腹圧をかけないようにする
いきみ逃しの際には、腹圧をかけないようにするのがポイントです。いきみは強い便意に似ており、腹圧をかけて赤ちゃんを押し出そうとする働きが「いきみたい」という状態として現れます。
しかし、子宮口が開ききる前にいきんで腹圧をかけてしまうと、産道がむくんでお産に時間を要する原因になりかねません。そのため、いきみ逃しの際には、腹圧をかけず体の力を抜いて、リラックスした状態を意識することが大切です。
少しでも楽な姿勢を探してマッサージを試す
いきみ逃しをしやすい姿勢や、楽になるマッサージ方法は人によって異なります。たとえば、尾てい骨を押してほしい人もいれば、肛門をテニスボールで圧迫してほしい人もいます。
最適な方法は実際に陣痛が起きてからでなければわからないため、少しでも楽な姿勢を探してリラックスできる環境を整えましょう。
さまざまな方法を取りながら、子宮口が開ききるのを待つことが大切です。
陣痛室での過ごし方
出産は陣痛の時間も含めると長時間にわたることが多いため、体力をしっかりと保っておく必要があります。そのためには、食事をしっかりとることが大切です。出産への不安と痛みでそれどころではないという人も、体調が悪くなければ手軽に食べられる食事を用意してもらいましょう。
陣痛室では、ベッドの上で過ごすのではなく、無理のない範囲で部屋の中を動いてみるのもおすすめです。歩くことによって重力がかかるため、赤ちゃんが産道に向かって下がってくるサポートになります。動くゆとりがある場合は、ゆっくり歩いたり軽く体を動かしたりして気を紛らわせましょう。
赤ちゃんが無事におなかから出てくるのか、母子ともに元気に出産を終えることができるのか、不安でいっぱいになってしまうと思います。しかし、出産にはリラックスも大切です。
これから新しく生まれる命をおおらかな気持ちで迎えることができるように、好きなアロマを炊いたり、好きな音楽をかけたりしてリラックスして出産に臨みましょう。
痛みがつらいときは、テニスボールや野球ボールを使って痛いところに押し当ててもらうのもひとつの方法です。押されることによって陣痛の痛みを紛らわせることができます。また、マッサージをしてもらうのもおすすめです。付き添いをしてくれている家族に頼んでマッサージしてもらいましょう。
また、陣痛時の楽な姿勢は千差万別です。右向きや左向き、四つん這いになる、仰向けになるなどさまざまな姿勢を試してより楽な姿勢で過ごしましょう。クッションや布団、バランスボールなど柔らかいグッズもおすすめです。いろいろと試して自分に合ったリラックス方法をみつけてくださいね。
まとめ
いきみ逃しは、陣痛の痛みや間隔がピークに差し掛かるタイミングで行わなければなりません。ですが、いきみ逃しがうまく行えれば、スムーズにお産を進めることができます。体の力を抜くこと、呼吸を意識することを念頭に、少しでも楽な姿勢やマッサージ方法を試しながら乗り切りましょう。