産後クライシスとは?原因と回避方法を解説
出産後は、生活面や身体面など女性にさまざまな変化が起こります。これらの変化をきっかけに、それまで良好だった夫婦仲が悪くなってしまうケースがあります。これを「産後クライシス」といい、社会的にも注目されている問題です。今回は、産後クライシスの症状や原因、回避方法を解説します。
産後クライシスとは
産後クライシスのクライシス(crisis)には、「危機」という意味があります。出産をきっかけとして夫婦間の愛情が冷め、夫婦関係が悪化してしまう状態を指します。2012年にNHKの番組で提唱され、認知度が広まった言葉です。
産後クライシスは、出産後から2年ほど続くといわれていますが、人によっては長いと4~5年ほど続く場合もあります。妻の体調が回復するタイミングや、夫の子育ての理解や協力などによって、産後クライシスの期間は変わってくるのです。
ベネッセ教育総合研究所が行った調査によると、「配偶者といると本当に愛していると実感する」といった質問について、妊娠期の妻の74.8%が「あてはまる」と回答しているのに対し、0歳児期は44.7%、1歳児期は35.7%と徐々に低下していることがわかっています。
一方、同様の質問を「あてはまる」と回答した夫側の回答率は、妊娠期は74.5%で1歳児期は54.7%で約2割の減少です。
このことから、産後クライシスの期間中は、特に妻から夫への愛情が下がりやすい傾向にあり、夫から妻への愛情の下がり具合よりも大きくなっていることがわかります。
出典:ベネッセ教育総合研究所「第1回 妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査(1歳児期) 報告書」
近年では、産後まもなくして離婚する夫婦も珍しくありません。厚生労働省の調査によると、ひとり親家庭のうち、子どもが生まれてから2年以内に離婚した割合は、4割を占めていることがわかっています。子どもが3歳から5歳の間に離婚した夫婦も含めると、全体の6割に達します。この結果から、産後クライシスが離婚につながる原因のひとつであることが予測されます。
出典:厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要」
産後クライシスが起こるのはなぜ?
産後クライシスが起こる原因として、下記の事象があげられます。
・女性のホルモンバランスの影響
・子ども中心になる生活の変化
・育児に対する夫婦の考え方や負担の違い
・夫婦のコミュニケーション不足
出産直後のママは、女性ホルモンの急激な低下で感情のコントロールが難しくなったりストレスが溜まったりするため、精神的に不安定となる傾向にあります。また、出産後は子どもにつきっきりの生活が始まることから、なかなかゆとりがもてず、心身ともに大きな負担がかかりやすいです。
育児の負担がどちらか一方に偏ってしまったり、育児についての考え方が夫婦で一致しなかったりすると、相手に対して不満を抱えます。夫婦でコミュニケーションやスキンシップを取ろうとしても、子どもの世話が優先になるとどうしても希薄になりがちです。
女性側は妊娠中から子育てについての心構えができているのに、男性はその変化についていけないというケースも珍しくありません。この状況が出産後まで続くと、妻からすれば夫が育児に協力的でないと思えてしまうでしょう。
産後クライシスを防ぐ方法
産後クライシスを防ぐためにも、夫婦で子育てや家事についてしっかりと話し合う時間を設けることが大切です。お互い察して欲しいと思うのではなく、自分の口から伝えなくてはいけません。妻は夫に対して「こうして欲しい」と思っていることを、冷静にわかりやすく伝えましょう。夫は妻の状況を理解し、自分に何ができるのかを考え、寄り添う姿勢をもつことが重要です。
夫婦の話し合いで折り合いがつかない場合は、家族もしくは育児経験のある友人・知人などに間に入ってもらい、客観的な視点で対策を考えてみましょう。
また、産後クライシスを抱えている人の中には、育児疲れで余裕がもてずに相手へイライラをぶつけてしまうこともあるでしょう。その場合、ひとりの時間、もしくは夫婦だけの時間を確保することをおすすめします。家族に子どもを預けるほか、自治体でも一時保育のサービスを提供しているところが増えているため、積極的に活用を検討してみると良いでしょう。いったん子育てから離れてゆとりのある時間を過ごすことで、気分がリフレッシュできます。
まとめ
子どもが生まれると、新しい生活に向けて期待が高まる一方で、産後クライシス問題を抱える夫婦も増えています。産後クライシスは生活の変化や価値観の違いによって起こるため、相手に不満を抱えてしまう場合は、夫婦で育児や家事についてしっかりコミュニケーションをとる時間を確保するようにしましょう。